ヒトはなぜ肥満になるのでしょうか?
通常の答えは、「過食」と「運動不足」です。
米国などで肥満者が急増している原因は、単純炭水化物や脂肪を多く含むジャンクフードの過剰な摂取と、運動不足の2つです。
これ以外の理由として、新しい原因を示唆する研究が米国の研究チームから発表されました。
今週公表された肥満研究の専門ジャーナルに、アラバマ大学の研究者を中心とするグループから、食事と運動以外の肥満の原因についての考察が掲載されていました(
Allisonら)。
この研究は、過去に発表された肥満に関連する論文100個以上を対象にして、統計学者が解析を行い、過食と運動不足以外の肥満の原因を見出した、というものです。
では、どのようなことが肥満をもたらすのでしょうか。
今回の論文では、過食と運動不足以外に肥満をもたらす理由として、10項目が挙げられています。
例えば、次のような因子です。
---不眠
→平均睡眠時間は減少してきており、睡眠不足が肥満の誘因になることを示す研究があるとのことです。
---エアコン
→温度変化の少ない快適な室温が、(暑さによる)発汗や(寒さによる)震えの機会を減らし、消費エネルギーを減らした、ということです。
---内分泌かく乱物質
→加工食品などに含まれる内分泌かく乱物質が、代謝を障害し、肥満をもたらすとのことです。
その他、高齢出産、人口構成や人種構成の変化(米国の場合です)、医薬品の副作用、禁煙を機会にした体重の増加、自然淘汰といった理由が挙げられています。
議論を呼びそうなのは、「太った人は太った人を好み、結婚する傾向にある、その結果、生まれてくる子供も太っている」という理由です。
この研究は、これまでに発表された肥満に関連する論文を解析した結果に基づいています。ヒトだけではなく、動物実験も含まれています。また、介入試験も観察研究も対象になっています。それらを統計処理した結果、前述の要因が導き出されたという論文です。
読み物としては面白い説と感じますが、肥満対策に結び付けるのは容易ではなさそうですね。
同じカロリーを摂っても太りやすい人とそうでない人がいることから、その個人が肥満になるかどうかは、体質(遺伝素因)が大きくかかわっています。
一方、肥満者が「増加」している原因は、環境の変化です。
環境・ライフスタイルの変化として、具体的には、食生活と運動習慣の変化の2つが指摘されています。この2つが肥満の人が増えている主因であることについて、基本的にはコンセンサスが得られているといっていいでしょう。
月並みですが、やはり、食生活と運動習慣の見直しが、一番確実な肥満対策と考えられます。