今月の骨代謝研究の専門ジャーナル(電子版)に,カルシウム代謝と血管石灰化との関連を調べた研究が,ニュージーランドのグループ(University of Auckland)から報告されていました。
(
J Bone Miner Res. 2010 Jul 16.)
血管の石灰化は,カルシウムの異所性沈着であり,糖尿病や腎臓病(透析患者)における動脈硬化性疾患のリスクとなることから注目されています。
カルシウム代謝に関与する因子として,
血中カルシウムやリン,カルシウムの摂取などがあります。
今回の研究では,腹部大動脈および冠動脈における血管石灰化との関連が調べられました。
具体的には,閉経後の健常女性1471名を対象に,ランダム化二重盲検偽薬対照試験として,1日あたり1グラムのカルシウムが5年間投与されました。
また,健康な中高年の男性323名を対象に,1日あたり,600mgあるいは1200mgのカルシウム(あるいは偽薬)を2年間投与したランダム化二重盲検偽薬対照試験も行われています。
腹部大動脈の状態が投与前後で比較されました。
163名の男性では,試験終了後平均1.5年の時点で,冠動脈の評価が行われました。
解析の結果,閉経後の女性では,腹部大動脈の石灰化は,血中カルシウム(P<0.001),血中リン(P=0.04),カルシウムリン積(P=0.003)と有意に相関していましたが,心血管イベントとこれらの因子の変化の相関は認められていません。
中高年男性では,腹部大動脈および冠動脈の血管石灰化と,これらの因子との関連は認められませんでした。
また,食事に由来するカルシウムの摂取や,カルシウムサプリメントの摂取は,腹部大動脈の石灰化と関連は示されていません。
さらに,カルシウムサプリメントと冠動脈石灰化との間にも関連は認められませんでした。
その他,年齢での補正後,腹部大動脈石灰化と,介入開始時における低い骨密度との間に相関はなく,また,骨密度の変化や骨折頻度とも相関は示されていません。
以上のデータから,血中カルシウム値とリン値は,高齢女性における腹部大動脈石灰化と相関が示唆されます。
ただし,食事に由来するカルシウム,カルシウムサプリメントの摂取とは関係はないようです。
かつて,血管石灰化は,血中カルシウムやリンが血管壁に沈着して生じるという考えがありました。
最近では血管平滑筋細胞が老化して石灰化を生じている可能性が示されています。
また,骨粗鬆症治療薬の医薬品(ビスフォスフォネート)が異所性石灰化を生じ,その過程に最終糖化反応生成物(AGE)が関与することが報告されています。
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