今月の腎臓病学の専門ジャーナル(電子版)に、慢性維持透析(血液透析)患者におけるビタミンD3サプリメントの効果を調べた臨床研究が、米国のグループ(Creighton University)から報告されていました。
(
Clin J Am Soc Nephrol. 2012 Jul 12.)
近年の研究によって、ビタミンDによる免疫調節作用や抗がん作用、インフルエンザ予防作用などが見出されてきました。
ビタミンD欠乏は、慢性腎臓病患者において高率に認められます。
例えば、
メタ解析では、血中ビタミンD値が10ng/mL(25-nmol/L)低下するごとに、
慢性腎臓病患者の全死亡率が14%増加するという報告があります。
さて、今回の研究では、慢性維持透析患者におけるビタミンD3サプリメントの動態が検証されました。
具体的には、
ステージ5の慢性腎臓病患者を対象に、
1週間あたり10,333 IUのコレカルシフェロール(ビタミンD3)サプリメント、
あるいは偽薬が、
15週間投与され、
血中ビタミンD値(25-OH-D値)の変化が調べられています。
(2007年11月から2010年3月に実施。ランダム化二重盲検偽薬対照試験)
解析の結果、
まず、投与前の血中ビタミンD値は、
介入群では13.3 (11.1-16.2) ng/ml、
偽薬群では15.2 (10.7-19.9) ng/ml
でした。
15週間のサプリメント投与後、
介入群では、23.6 (19.2-29.9) ng/mlへと増加したのに対して、
偽薬群では、有意な変化は認められていません。
介入群では、カルシトリオールの有意な増加も示されました。
なお、カルシウム、アルブミン、リン、副甲状腺ホルモンについては、両群とも有意な変化は見出されませんでした。
以上のデータから、
慢性維持透析患者では、
1週間あたり10,333 IUのビタミンD3サプリメントの投与によって、
血中ビタミンD値の有意な増加が期待されます。
今後、ビタミンDサプリメントの投与によって、慢性腎臓病の予後が改善するかどうかのRCT等が期待されます。
ビタミンDサプリメントに対する効果には個人差がありますが、
臨床的には、ビタミンDサプリメントを1,000IU/日の用量で投与すると、血中25ヒドロキシビタミンD値が10ng/ml増加する、
という報告もあります。
マルチビタミンのビタミンDはRDAのための設定ですので、別途、ビタミンDサプリメントの利用となります。
近年、ビタミンDの機能性として、免疫調節作用や抗がん作用、インフルエンザ予防作用なども見出されてきました。
また、さまざまな生活習慣病では、血中ビタミンD値が低いことが知られており、健康保持や疾病予防のために、ビタミンDサプリメントの摂取が推奨されます。
(欠乏症の予防ということでは通常の食事からでも補えますが、疾病予防という目的では、1日あたり1,000〜2,000
IUの摂取が必要であり、サプリメントを利用することになります。)
今日では、ビタミンD欠乏症の典型例のような疾患は少ない一方、血中ビタミンDの低値が広く認められることから、生活習慣病の予防やアンチエイジングを目的としたビタミンDサプリメントの利用が推奨されます。
日本人の間でも、ビタミンDの潜在的不足/欠乏が顕著になっています。
たとえば、
日本人妊婦の90%がビタミンD不足、
血中ビタミンD値が高いと大腸腺腫リスクが低い
というデータがあります。
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