今月の栄養学の専門ジャーナルに、多発性硬化症(MS)患者において、プロバイオティクス投与による抗炎症作用を示した臨床研究が、イランのグループ(Kashan University of Medical Sciences)から報告されていました。
(J Am Coll Nutr. 2017 Sep 18:1-6.)
多発性硬化症(MS; multiple sclerosis)は、免疫系の関与する神経変性疾患の1種であり、
脳における神経変性に炎症が関与することが示唆されています。
サプリメントに関しては、次の報告があります。
多発性硬化症に対する抗酸化サプリメントの有用性:系統的レビュー
多発性硬化症に対する機能性成分サプリメントによる抗炎症作用
今回の研究では、
多発性硬化症(MS)患者において、
プロバイオティクス投与による炎症および内分泌代謝関連遺伝子発現への影響が検証されました。
具体的には、
ランダム化二重盲検偽薬対照試験として、
MS患者40名を対象に、
・プロバイオティクスカプセル投与群:20名
(Lactobacillus acidophilus, Lactobacillus casei, Bifidobacterium bifidum, and Lactobacillus fermentum (2 × 109 colony-forming units/g each)
・偽薬投与群:20名
の2群について、12週間の投与が行われ、
末梢血球を用いて、
炎症、糖代謝、脂質代謝関連遺伝子発現が調べられています。
解析の結果、
偽薬投与群に比べて、
プロバイオティクス投与群では、
末梢血単核球において、
炎症関連遺伝子(IL-8、TNF-α)発現が有意に抑制されていました。
(p < .001)
なお、IL-1、PPAR-γ、LDLR遺伝子発現には有意な変化は認められませんでした。
以上のデータから、
多発性硬化症患者において、
プロバイオティクス(乳酸菌とビフィズス菌)投与による炎症関連遺伝子発現抑制作用が示唆されます。
今後、MSに対する補完療法としての臨床的意義の検証が期待される分野です。
多発性硬化症(MS)に関連した機能性食品の研究報告として、下記のデータが知られています。
コエンザイムQ10による多発性硬化症での抗疲労効果
多発性硬化症の症状とビタミンDとの関連
コエンザイムQ10による抗炎症作用@多発性硬化症患者
コエンザイムQ10には、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)と還元型(=ユビキノール,ubiquinol)があります。
還元型CoQ10のほうが、酸化型CoQ10よりも体内で利用されやすいと考えられます。
(酸化型CoQ10は、体内に吸収された後、いったん還元されてから、利用されます。)
コエンザイムQ10に関するこれまでの研究の多くは、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)を用いています。
したがって、一般的には、生活習慣病の予防やアンチエイジング目的に関して、
酸化型CoQ10のユビキノンの摂取で十分な効果が期待できます。
一方、特定の疾患に対して用いる場合、あるいは、体内の生理機能が低下している高齢者の場合には、
還元型CoQ10の利用が推奨されます。
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