今月の疼痛研究の専門ジャーナルに、ビタミンD不足と腰痛との有意な相関を示したメタ解析が、オーストラリアのグループ(University of Sydney)から報告されていました。
(Pain Physician. 2017 Nov;20(7):611-640.)
腰痛は、日常生活に支障をきたす主要な病態の一つです。
医薬品として、鎮痛薬や抗炎症剤薬が処方されますが、対症療法なのであまり有効とはいえません。
(日本では、保険診療での湿布薬の乱用が問題となっています。)
サプリメントでは、抗炎症作用を有する機能性食品が知られています。
今回の研究では、
抗炎症作用を有するビタミンDと、腰痛との関係が検証されました。
具体的には、
観察研究を対象にした系統的レビュー/メタ解析として、
主要医学データベースを用いて、
(MEDLINE, CINAHL, EMBASE, AMED, WEB OF SCIENCE, and SCOPUS)
2017年3月までに収載された、ビタミンDと腰痛に関する疫学研究が検索され、
血中ビタミンD [25(OH)D]と、
腰痛患者、対照群、腰痛の重症度などとの関連が調べられています。
関連論文として、
105報が抽出され、
29報が系統的レビュー、
22報がメタ解析の対象となりました。
(19報が横断研究、9報が症例対照研究、1報が単群の外科的介入試験の介入前データ)
解析の結果、
まず、
19報のデータによると、
腰痛患者は、
ビタミンD不足と有意に相関しており、
(pooled OR = 1.60, 95% CI: 1.20 - 2.12, P = 0.001, 19報),
ビタミンDの重度の欠乏と有意に相関していました。
(pooled OR = 2.08, 95% CI: 1.19 - 3.64, P = 0.010, 7報)
また、
血中ビタミンD値(25(OH)D)は、
腰痛を有していない群に比べて、
腰痛を有している群では有意に低値でした。
(weighted MD = 3.86, 95% CI: 0.20 - 7.52, P = 0.039, 12報)
さらに、
ビタミンD欠乏
(pooled OR = 1.83, 95% CI: 1.26 - 2.66, P = 0.002, n = 9)
あるいは、
血中ビタミンD低値
(weighted MD = 7.64, 95% CI: 4.02 - 11.26, P < 0.001, n = 4)
と
腰痛との関連は、
女性では有意な相関が認められましたが、男性では有意差は検出されませんでした。。
(pooled OR = 1.06, 95% CI: 0.62 - 1.81, P = 0.213, n = 3)
その他、
ビタミンD欠乏と、腰痛との相関は、60歳未満、特に女性において顕著でした。
なお、
腰痛患者での疼痛の程度と、
ビタミンD値には明確な関係は認められませんでした。
今回のメタ解析の限界として、
縦断研究が含まれていないことがあげられています。
以上のデータから、
腰痛とビタミンD不足あるいは欠乏との関連が示唆されます。
この相関は、特に、女性及び、重度の欠乏症にて顕著ですが、
腰痛の程度とビタミンD値との間では明確な関連は見出されませんでした。
今後、ビタミンDの投与試験による臨床的意義の検証が期待される分野です。
近年、ビタミンDは、骨の健康維持だけではなく、免疫調節作用や抗がん作用など、多彩な効果が示されています。
一般に、
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