今月の薬理学の専門ジャーナル(電子版)に、マリアアザミによるチトクロームP450への影響を調べた基礎研究が、米国のグループ(University of Florida)から報告されていました。
(
Drug Metab Dispos. 2014 Jul 15.)
医薬品と食品成分との相互作用に起因する有害事象については、
1990年代のカルシウム拮抗剤(降圧剤の1種)と、グレープフルーツ果汁成分との相互作用が明らかとなり、
注目されるようになりました。
(現在、降圧剤の一部では、グレープフルーツの摂取をしないように、という注意喚起が行われています。
過度な降圧作用が生じうるためです。)
次に、医薬品とサプリメントとの相互作用では、
セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)と、一部の医薬品との間で相互作用による有害事象が知られるようになり、
2000年に当時の厚生省から、注意喚起の通知が行われています。
これらはいずれも、肝臓での薬剤代謝酵素であるチトクロームP450の特定の分子種に対して、
食品やサプリメントの成分が作用し、その活性を誘導したり阻害したりするため、
同じ分子種によって代謝される医薬品と併用すると、相互作用が生じる、
つまり、医薬品の作用が増強されたり減弱されたりする、という機序です。
相互作用による有害事象に関して、
サプリメント側の原因として最多の成分は、セントジョーンズワートです。
セントジョーンズワートは、CYP3A4で代謝される医薬品と相互作用を生じえます。
医薬品側の原因として最多の成分は、ワルファリン(ワーファリン)です。
ワルファリンの代謝酵素は2C9です。
なお、相互作用が生じればすべて臨床的に問題というわけではありません。
一部の治療閾値が狭い薬剤では注意が必要ですが、培養細胞を用いたシャーレ上の
in vitro系のデータが、そのまま臨床と同じ意味ということではありません。
ただし、相互作用はすべて問題というわけではありません。
たとえば、スタチン剤(コレステロール降下剤)を服用している場合、内在性コエンザイムQ10値が半減することがわかっています。
このことが、ミトコンドリア障害を生じて、筋痛症などの副作用を生じる一因とも推定されています。
そのため、スタチン剤を服用中の場合、コエンザイムQ10サプリメントの摂取は必須です。
(なお、医薬品のノイキノンは、用量が30mgと少ないため、不十分です。
サプリメントで、100mg前後の摂取が必要です。)
さて、
今回の研究では、
マリアアザミ(学名
Silybum marianum)によるチトクロームP450への影響が調べられました。
先行研究では、
in vitro系において、マリアアザミによるCYP2C9への阻害が示唆されています。
しかし、前述のように、相互作用については、
in vivo系での検証による臨床的意義の検索が必要です。
今回の研究では、
健康な被験者9名を対象に、
マリアアザミの標準規格サプリメント(分3)を14日間投与し、
指標薬物を使って、
CYP1A2, CYP2C9, CYP2D6, CYP3A4/5
への影響が調べられました。
(指標薬物は、
カフェイン、トルブタミド、デキストロメトルファン、ミダゾラム)
解析の結果、
マリアアザミの投与は、
いずれの指標医薬品の血中濃度AUCにおいても有意な影響は見出されませんでした。
したがって、
健常者を対象にした今回のデータからは、
マリアアザミは、
薬剤代謝に関係する主なチトクロームの分子種(CYP1A2, CYP2C9, CYP2D6, or CYP3A4/5)には影響を与えず、
相互作用のリスクは低いことが考えられます。
最近の
in vitro研究では、下記の報告で、マリアアザミによるCYP2C9への阻害作用が示されていますが、
サプリメントの成分と肝臓薬剤代謝酵素の基礎研究
今回のヒト臨床試験の結果からは、臨床的意義は否定的です。
実際、マリアアザミについて、
医薬品とサプリメントの相互作用による有害事象は知られていません。
一般に、
マリアアザミについては、安全性が高いハーブとして知られており、相互作用による有害事象は現在のところ、知られていません。
マリアアザミは、多くの臨床試験で、肝保護作用が示されており、
アセトアミノフェンのように、肝毒性のある医薬品と一緒に摂取することが推奨されます。
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